ワケあり!
「先生の前に立ちはだかる、お前の壁は厚そうだ」

 京は苦笑したが、絹が考えたような、嫌悪などは見て取れなかった。

「まあ、なんにせよ…聖女ぶられるより、まだ悪女くさい方が好みだがな」

 どうやら。

 ボスのことを、京はあきらめてくれた気がする。

 しかし、その代わりに、不穏な言葉が投げられた。

 色恋の香り。

「ふふふ…それはどうもありがとう…話が終わったなら、私は戻るわね」

 だから――彼好みの悪女らしく、かわすことにした。

 バランスを壊したいなら、ボスの許しをとってきて。

 心の中の言葉を飲み込みながらも、絹は少しだけ肩が軽く感じられた。

 かぶる猫の分量が、少なめでいいというのは、結構楽になるものなのだ。

 部屋を出ながら、絹は再び重い猫をフル装備したのだった。
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