身代わり王女に花嫁教育、始めます!
「だが、娘を無事に帰してもらえるなら、と大公妃もお前が王女であることを認めた。大公の話では、アシャは愛妾や側室の身分を断ったそうだ。侍女として宮殿にとどまったのは、実際は王女である娘の安全と教育、そして、将来を考えてのことだろうな」


リーンは母の切なさを思い、胸がいっぱいになる。

愛する男性のそばにいられるものの、その人には妻がいて、自分は寄り添うことができないなんて。

そんな辛い思いをリーンのために耐えてくれたのだ。

母の寿命を縮めたのはリーンかもしれない。そう思うと、申し訳なさにいた堪れなくなる。


「リーン、お前が泣くことはない。親が子を守るのは当然のこと。それができぬ者は虫けらにも劣る」

「サクルさま……では、わたしは本当にあなたさまの妻になってもいいのですね?」


リーンは手を伸ばし、サクルの首に抱きついた。

同時に、彼の腕が細くしなやかな腰に巻きつき、リーンを強く抱き寄せる。


「もちろんだ。さっきからそう言っておろう」


返事もそこそこに、ふたりは唇を重ねた。


< 230 / 246 >

この作品をシェア

pagetop