身代わり王女に花嫁教育、始めます!

(5)灼熱の楔

リーンのしっとりと濡れた身体を、サクルは白い敷布の上に横たえた。

砂丘から吹き降ろす乾いた風が、ふたりの身体から水滴を飛ばしていく。リーンは覆いかぶさってくるサクルの胸を押し、小さな声で尋ねた。


「あ、あの……サクルさま……まさか、ここで?」

「不服か?」


結婚初夜というからには、きちんとした婚儀のあと、夜に行うことだと思っていた。それを、まだ朝というような時間に、しかも……寝台でもない場所で、なんて。


「いえ、ただ……宮殿の水に浸かったことで、わたしの身体は清められたのでは?」


なんとしても清らかな身体のままサクルの花嫁になりたい。そのためなら、どんな羞恥に耐えてみせる。リーンはサクルに言われた言葉を真実だと思っていた。

そんな彼女の耳元でサクルは囁く。


「私はこう言ったであろう――宮殿の水に身体を浸し、私と交われば何もかも消え去る――と」


リーンはハッとした。


「思い出したか? ならば、婚儀の前にお前の身体を清めよう。よいな」

「……はい……お願いいたします」


胸の上で手を組み、リーンは震える声で答える。


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