身代わり王女に花嫁教育、始めます!
片刃の先端が反り返った長剣シャムシールを手に、カリムは砂丘の頂点まで登った。


砂嵐は轟音を立て、意思を持つかのようにカリムを目がけて来る。

彼は動じることなく鞘から剣を抜き放つ。


戦がなくなり、実戦で剣を振るうことがほとんどなくなった。どこに行くのも側近どもが付いてまわる。彼らを振り切ることが些細な刺激であった。


そんな彼にとって、久しぶりの戦闘だ。

守るべき対象がいない分だけ楽な戦いと言えるだろう。


先ほどとは別種の興奮が彼を包み込む。


空気がどよめき、砂丘に砂の嵐が到達する。

同時に、カリムの口から呪文が零れた。


精霊は風を止め、巻き上げられた砂を地表に落とす。そのとき、黒煙を纏う邪悪な塊がカリムに襲いかかった。


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