なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−
◇
『−ラグー!』
テテムの鋭い警告が響いた。
「ああ…やられた!下等なケダモノどもめ、卑劣な策ばかりは思いつくらしい…」
緑ばかりの平和な風の中に、わずかに、しかしはっきりと異なる臭いが混じっていた。
かぎなれた獣臭。先刻闘った狼たちだ。
『…ラグー。彼奴らは使い魔。罠を張ったは使い手の…』
「分かっている。その使い手がケダモノだと言っている。…行かねば。」
苦い顔でつぶやいて、今にも崖を滑り下りようとするラグーに、テテムの鋭い制止が飛んだ。空中から、ラグーの前に白い腕が現れる。
『なりません!奴らの狙いは殿下でございます。村を襲えばあなたさまが追って来ると踏んでいるのでしょう。今行けば兄上の思う壷です!』
「−ではお前は!」
ラグーは叫んだ。
今やすっかり姿を現した従者を、燃えるような碧眼が射抜く。
「俺を釣る餌として引き裂かれる村人を捨て置くのか。兄どもは簡単にそれをさせるだろう…俺を捕らえるためなら。
俺が罠を避けて先へ行ったところで、この村が全滅するだけだ。使い魔は加減を知らない。」
『しかし…こんな所でみすみす時を失うよりも…』
主人を見つめるテテムの瞳は、真紅。
彼女の美しい顔がこんなにも憂いに曇っていたら、たいていの男は言うことを聞いてしまうだろう。
だが、ラグーの返答は厳しかった。
「それでは兄や母と同じになってしまうんだ!目的の他には何にも目をくれず、流れる血になんの悲しみも抱かなければ…。」
なんの罪もないこの村に、災厄をもたらしたのは自分だ。
「−例え"あれ"を見つけるのが遅くなっても…拾える命は拾うと決めた。」
『…ラグー…』
長剣を素早く背負い直す主人を、炎の精霊は寂しく見つめた。
「俺は世界を救うと決めた…だから。
−行くぞ!!」
少年は、崖のふちを蹴った。
『−ラグー!』
テテムの鋭い警告が響いた。
「ああ…やられた!下等なケダモノどもめ、卑劣な策ばかりは思いつくらしい…」
緑ばかりの平和な風の中に、わずかに、しかしはっきりと異なる臭いが混じっていた。
かぎなれた獣臭。先刻闘った狼たちだ。
『…ラグー。彼奴らは使い魔。罠を張ったは使い手の…』
「分かっている。その使い手がケダモノだと言っている。…行かねば。」
苦い顔でつぶやいて、今にも崖を滑り下りようとするラグーに、テテムの鋭い制止が飛んだ。空中から、ラグーの前に白い腕が現れる。
『なりません!奴らの狙いは殿下でございます。村を襲えばあなたさまが追って来ると踏んでいるのでしょう。今行けば兄上の思う壷です!』
「−ではお前は!」
ラグーは叫んだ。
今やすっかり姿を現した従者を、燃えるような碧眼が射抜く。
「俺を釣る餌として引き裂かれる村人を捨て置くのか。兄どもは簡単にそれをさせるだろう…俺を捕らえるためなら。
俺が罠を避けて先へ行ったところで、この村が全滅するだけだ。使い魔は加減を知らない。」
『しかし…こんな所でみすみす時を失うよりも…』
主人を見つめるテテムの瞳は、真紅。
彼女の美しい顔がこんなにも憂いに曇っていたら、たいていの男は言うことを聞いてしまうだろう。
だが、ラグーの返答は厳しかった。
「それでは兄や母と同じになってしまうんだ!目的の他には何にも目をくれず、流れる血になんの悲しみも抱かなければ…。」
なんの罪もないこの村に、災厄をもたらしたのは自分だ。
「−例え"あれ"を見つけるのが遅くなっても…拾える命は拾うと決めた。」
『…ラグー…』
長剣を素早く背負い直す主人を、炎の精霊は寂しく見つめた。
「俺は世界を救うと決めた…だから。
−行くぞ!!」
少年は、崖のふちを蹴った。