なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−


チラチラと、闇の中に松明が見える。
家の奥に隠された子供が、怯えて泣いている。

『敵はまだ村の中までは入り込んでいないようです。』

「油断するな。村はずれには森が食い込んでいる…隠れる場所はいくらでもあるぞ。」

ラグーは、民家の屋根に潜んでいた。
傍らには、翼の生えた巨大な犬が控えている。人ならざる従者テテムの、もうひとつの姿だ。

二つの月は姿を隠し、追う者にも追われる者にも同様の闇を落としている。
家家の明かりは消され、辺りは完全な闇だ。
『…男達が松明で追い払おうとしているようですね…』

「まずいな。奴ら火を恐れるただの獣じゃない…かえって引き寄せてるな」

狼達は足音を消し、息の根ひとつ立てずに、それでも確実に獲物に忍び寄っている。
臭いだけが敵の存在を示していた。

遠くに見える松明の群れに、警告に行こうとラグーが立ち上がった瞬間。


「レネ!?」


足元で突然誰かが叫んだ。
ラグーが潜む屋根の内側で。

「…、だ……って君………!相手……君………だけで……か?!
………、ユマ……。こ……く……か?!」

誰かが、誰かを止めているようだ。

『−こんな時に何を争って……自らを危険にさらしたいのか…』
「…静かに。奴らが来たら俺が守ればいい」

その時、もう一人の声が響いた。

「−だったら!」


「…!!」

甲高いその声に、ラグーはハッとした。
聞き覚えのある少女の声。

忘れもしない。
鷹のような強い瞳。


戸が開いた。わずかに点された明かりが漏れ、それを遮るように小さな影が飛び出して来た。

「!」

何もできずにいる間に、彼女がこちらを見上げた。
−目と目がぶつかった。

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