なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−
彼女の目を見て、ラグーは、違うと思った。
−こっちへ!と彼を導いた時の強さを、今は持っていない。

暗い瞳の底に映るのは迷ってしまった子供の絶望。
何かを守ろうとしていたあの時より、嫌な感じのする刹那だった。


「…お前、武器は。」


闇の中、すたすたと行ってしまう少女に、なぜかそう問うていた。

「そんなの……この手足で充分だよ。」

もう、わずかなカタチと声しか判別できない。彼女は立ち止まりもしない。

「…やつら相手に拳を突き出したところで、エサを投げてやるようなものだ。」

「だから何よ。あたしはあたしの理由で、あたしの戦い方であいつらをやっつける。ほっといてよ。」


最初に出会ってからのこの数時間で、一体何があったのか。
こんな不安定な意思で、一人で行かせられない。

ラグーは、家にいろと言うつもりだった。


「…待て。連れていってやる。」


「??」
『ラグー?!』

闇の中で、少女が驚いて振り返ったのが分かった。
巨犬の姿のテテムも、主人の予想外の発言に、次ぐ言葉が無い。

「…お前の理由があるんだろう?」

彼女が何に追い詰められているのかは分からないけれど。

『、村人を救うことが目的ではなかったのですか?!−小娘に手を貸すことなど…』

「−連れて行って。…守りたいの。」

テテムが咎めると同時に、少女の声がした。守りたいと言いながら、自分の弱さを知っている、頼りなげな答えだった。

「…テテム。俺は、夜に外をさまよっていた少女を保護した。そういうことと思え。」

主人のささやくような命令に、従者は黙って引き下がった。
ラグーは音もなく屋根を飛び降り、暗闇に立ち尽くす少女へ手を延べた。


「来い。」


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