なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−
「…なまえ、…」
今更聞くのも、こんな状況で聞くのもおかしい気がしてためらった。けれど、質問はちゃんと受け取られたようだ。
「ラグナ……ラグー、だ。そう呼ばせることにしている。」
「ラグー…」
不思議な名だ。この辺りには無い名前。
…そして、不思議な従者。
一体何者なのか。
「…お前は?」
「え?」
唐突にラグーが口を開いた。
「お前の名前を聞いている。」
「あ、……レネ、だよ。」
「レネ、か。そう呼ぶよ。」
レネは驚いた。高飛車で冷たい命令口調だから、他人のことに興味なんてないと思っていたから。
やっぱり不思議だ。ラグーといるとき、レネは他の何もかもを忘れていた。家に置き去りにしたディニのこと、もうきっと生きては会えないユマのこと、その大事な姉が語った、まだ知らない自分のこと…
『…、ラグー。奴らは風下にいるようです。全く気配が読めません。』
獣が再び口を聞いた。
この非常事態に何をのんびりしているのかと、とがめるかのような口調だ。
「では奴らはまだ村の中心には着いていないのか…?それならそれで先に村人を逃がせるか…」
−最初に誰かが、村はずれのレネの家の外で叫んだのは四半時ほど前。
いくら広いとはいえ、そこから村の中心までは1キロほど。足の速い狼族なら、とっくに到達しているはず。
「…ラグー、あいつら、ラグーのこと追っかけて来たの?」
「そうだ…申し訳ないことにな。」
単に狩りが目的でないなら。
追手が、ラグーただ一人を目的としているなら。
−レネの頭に、恐ろしい考えが沸き上がって来た。
「…!ラグー、そっち行っちゃだめだ!」
『!…殿下!』
レネが叫んだのとテテムが吠えたのは同時だった。
…そのとき、雲が切れた。
第二の月の蒼い光が、辺りを照らした。