なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−
「ギャウッッ!!」
短い叫びと共に、黒い影が地面に叩きつけられた。レネの回し蹴りが鼻面に華麗に入ったのだ。
起き上がる隙を与えず、踵落としで狼の眉間を狙う。
身を震わせて息絶えた獣を即座に離れ、距離をとってレネを囲む残党に向き合った。
…命は重たい。
ユマと手合わせしたり村の子と喧嘩したり、武踏を使ったことは何度もある。
なのに、構える拳が震える。
「………来い。打ちのめしてやる。」
最初の一頭。既に命はなく、草の上に黒々と横たわっている。
警戒したのか、残りの狼たちは遠巻きにしたまま唸るばかりだ。
「−ヤァッッ」
レネは自ら突進した。不意を突かれた一頭が、強烈な落とし蹴りを食らって泡を吹いた。
頚椎を一撃。即死だ。
手が震える。
息をつく肩が震える。
どうしようもなく血の気が引いていく。
「…っ…早く、来なよ…っ」
強がらないと崩れ落ちそうだ。
挑発に乗るように、狼達がじわりと近づこうとしたとき。
『−待て。』
地の底から響くように、低い男の声がした。
『少しはやるようだが小娘…あの王子の手先か?』
声の主を探しても、周囲に人影はない。
「…誰!?隠れてないで出てきなよっ!
王子とか手先とか、何のこと?!」
そのときだ。
レネの目に、信じられない光景が飛び込んで来た。
『オレが直に相手をしてやる。後悔するな…』
レネを囲む包囲網の、背後に控えた一頭。
その姿が…
「…嘘…な、に…?」
獣の輪郭を失い、黒い塊へと溶解する…。
次の瞬間には塊は立ち上がり、いつの間にかそこにはひとりの男が立っていた。