なみだのほし−Earth Tear Chlonicle−
ラグーの声がして、空を見上げた。
抜き放った刃が閃いて、次の瞬間に彼は宙へ踊り出ていた。
まさにとどめを刺そうとレネに剣を突き付けていた男は、瞬時に身を翻してラグーに対峙した。
−ギィン!
鍛え抜かれた刃と刃が、火花を散らす。
一撃で引き着地したラグーを、黒い男の長剣が薙ぎ払う。ひらりと宙に舞い上がって避け、そのまま男を飛び越えた。
「…ラグー…」
レネに背を向けて剣を構え直す彼は、とても怒っているように見えた。
「…下がっていろ。」
声が怒っている。言葉のひとつひとつが、無数の針を張り巡らした獣のようだ。
レネは、大人しく下がった。
今のラグーの感情には、軽々しく触れてはいけないものが潜んでいる気がした。
「…これはこれは。」
不意の攻撃に怯んだ男は、自分が戦う相手を見てニヤリと笑った。
「随分久しぶりではありませんかな、名無しの殿下よ…。御身大きくなられましたな」
黒いローブ、黒いマントに身を包んだ、黒い髪と蒼い眼の細長い男。
レネの目の前で、狼から変化した。ラグーの敵らしきその男は、敵なのにラグーに敬語を話す…