河のむこう
「ねぇ、もうひとつよくわかんないことがあるんだけど…」
あの、冷たいくちびるのこと…
「なんだよ」
冷たい返事が返ってくる。
さっき軽くからかったことを、まだ怒ってるのかな?
「あのとき…なんで信じさせるためにキスしたの?」
「………」
「初対面なのによくできたよね。」
「…」
「それと…」
急に低めの声になるあたし。
「なんで、あんたのくちびる、そんなに冷たいの…?」
「…」
彼は、口を閉ざしたまま。
「………いや、だったか?」
小さな声で彼は答えた。
いやだったか?
別にこの人、かっこいいから嫌じゃなかったけど…
「嫌じゃなかったけど、冷たいくちびるで、なんか…、ぬくもりがなくて…悲しかったかもしれない。」
「これも、話さなくちゃいけないよな。」