河のむこう
「俺は、ここに来てからずいぶんたつ。19歳でバスの転落事故で死んだ。」
あたしの顔を見ずに、彼は語り始めた。
「正直、俺も最初ここに来たときはわけわかんなかったよ。
説明書見せられて、なんのことかさっぱり…
そしたらな、最初のうちは感覚とかあったのに、今はほとんどねぇんだ。
時間がたって、この世に戻るまでの期限が近づくとここにいるための代償を取られるらしい…」
期限…代償…
「だからお前も、早く俺を好きになんないと感覚とか奪われるぞ?」
………
哀しそうな顔…。 感覚がないことは、かなりつらいようだ。
「同じように愛の項目が埋まってないお前が来たときは、嬉しかったよ。これでやっと、あったかい肌に触れられるってな。」
嬉しそうな顔をする彼。
「感覚なないから、体も冷えきって冷たい。俺はよくわかんねーけど、よっぽど冷たいんだな?」
「うん…」
「触れられるの、嫌だったよな。ごめん。」
「嫌じゃ・・・ないよ・・・?」
とっさに口から言葉がでた。
あたし・・・今、何言って・・・!
「・・・・・」
男性が再び目を丸くして、こちらを見る。
「いやっ、今のは口がすべった・・・じゃなくて、本音が出たんでもなくて・・・えっと、そのっ・・・」
「はははっ!」
男性は声をあげて笑った。
楽しそうな笑顔・・・。
そんな顔に、あたしの目は奪われる。