おかたづけの時間
あたしはワンピースにもう一度着替え、バスに乗って自宅に帰った。
 ちょっとショックなことがあった。
「おねえ、何かついてるよ」と、あたしの髪から、弟の秋久が何かをつまみあげた。
 それは大きな綿ぼこりであった。
 ああ、あたしそんなもんくっつけて街中を歩いて、しかも結構人が乗ってるバスで…帰ってきちゃったよ。
 どっと疲れが出て、あたしは自分の部屋にこもった。鏡台で自分の顔を見ると、グロスを塗った唇にも、出るときビューラーでくるんと巻いたまつげの上にもちいさなほこりが乗っていた。すぐにお風呂に入ったが、さすがにその日の夕食は宅配ピザにしてもらった。
 あたしのそんな脱力した姿を見て、何を誤解したのか夏樹がにやりと笑ったが、もう否定する気もなくベッドに倒れこんだのだった。

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