おかたづけの時間
「ねえ、こいつらって、何をかけたら死ぬんだろう」と、あたしはこの掃除の相棒に声をかけた。
「やっぱ殺虫剤?」
「ていうか、フナムシが大量発生するほどの何かをこんなに溜め込むな。あー焼きたい、ガソリンかけて台所ごと燃やしたい」
 あたしはぎょっとする晃を尻目に、ゴム手袋をし、マスクをして、髪はきちんと束ねてタオルで巻いて、生ゴミやらビニールやら、もう何かわからなくなった食器や調理器具などの諸々を、分別しながら全部ゴミ袋に突っ込んでいった。ありがたいことにこの相棒は、ブランド物の鍋が出てきても容赦なく捨ててくれてそういうところは頼りがいがある。何せ、散らかす割に、物に対して執着心が無いのだ。意外と所有している物の種類も少ないので整理しやすいことも助かった。
とにかく捨てて捨てて捨てまくって、お湯できれいにすすぎ、洗剤をかけて磨きぬくとぴかぴかに、鏡のようなステンレスのシンクが現れた。全く使っていなかった賜物であろう…勿体無いとしか言いようが無い。美しい台所である。
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