おかたづけの時間
2 海岸
待ち合わせの場所は海岸沿いのコンビニだった。6月なので、泳ぐには寒いが、海のそばを歩こうというデートは定番どころである。
 彼は迷彩柄のペインターに赤のTシャツ、という気楽な服装にニットキャップをしていて、きちんと制服を着ている時とはほとんど別人で、とってもワイルドに見えた。うち高校の制服はモスグリーンのダサいスーツ姿なので、私服も開襟シャツにジーンズあたりを合わせてくるかなと思ったが、こういう意外性は悪くない。
あたしは砂浜も歩けるように赤いサンダルを履いてきていた。スカイブルーのペディキュアまで完璧である。
 あたしたちは海辺に座り、コンビニで買ったパンと紙パックのコーヒーで、簡単なお昼を済ませた。
「今日はどこに行くの?」とあたしは、少しはにかみながら言った。どんな女でも、初めてのデートってのは少し緊張するものだと、あたしは思う。
「あー、俺んち」と彼は言った。
 ん?
「家って、家?」
「そ。」
 彼はそのままあたしの手をつないで歩き出した。意外と背が高くてどきどきする。
でも実家にいきなりって…どうなんだろう。
「あ、誰もいないから、大丈夫だよ」
「ふーん」
 じゃあ、いいけど。逆に期待が高まるけど。
 あたしはみだらな自分の心臓が高鳴るのを感じていた。この先、期待しないほうがおかしくない?
< 5 / 21 >

この作品をシェア

pagetop