おかたづけの時間
玄関に入って右側にすぐキッチンがあり、シンクの中には大量の何かが積まれている。(多分食器と生ゴミの類だ。部屋の外まで漏れてきた臭いの元はたぶんこれだろう)
 奥がリビング兼寝室といったところだろうが…やばいっ。物でもう床が見えない。
 おびただしい荷物…服や本やゴミの類が散乱していて床の高さが50cmほど上がっているようだ。これほどまでにどうやって一人の人が散らかすというのだ一体。そして壁にはさまざまな荷が塔のように、または塚のように築かれていて…触れたらさらに崩れてしまいそうだ。
 あたしは膝の力ががっくり抜けてその場にへたりこんだ。
 まあね、あたしにしちゃ良すぎる物件だと思ったのよ。こういう仕掛けが待っていたとは。うまくいきすぎると罰が当たるのね。変な自嘲気味の笑みを一瞬浮かべてしまう。
 美形の男が住んでるのがゴミ屋敷かよっ。
彼は驚いて、あたしの顔を見つめた。
「どうしたの?中入ったら?」
 こ、この部屋に入れですって?!
どんな頭の構造をしているのだ。
 あたしは今日に限って白のワンピースを着ているのよ。あっという間に雑巾みたいな色になっちゃうじゃないのよ。
 あたしの限界が来るのは一瞬だった。
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