おかたづけの時間
こ、この馬鹿野郎」
 あたしは猛烈に頭に来て、その怒りをエネルギーにして立ち上がり、晃のえり首をつかんだ。
「何言い出すんだよ。びっくりさせるなよ」
「こっちのセリフよ。何よこの汚い部屋は」
「何って…」
 今度は晃があたしの勢いに気おされた形で座り込んだ。
「イヤ、俺、片付けってしたことないし…」
 は…そうですか。
「実家のときは?」
「それはお手伝いさんが」
「そう」
 一応、うちの兄弟たちも、ある程度自分で出来る範囲のことは自分でやるというルールの下に生活している。料理と洗濯以外の掃除や片付けなどは、自発的に手が空いたものがやっている。という事で、あたしはこんなに何もできない男を初めて見た、という訳だ。
「一人暮らしって、面倒臭いんだよなー。本が好きで、たくさん持ってきたのが部屋の許容量をまず超えちゃって、積んでたら崩れてきて。あと、何でも本を読みながら行動する癖があるからどこにでも置いちゃうし。本の中に脱いだ服とかが埋まって。もう何処に何があるのかもわからない状態になってさ。もう何もかも面倒になって気がついたら台所も積んじゃって荒れ放題になってさ…」
 積むなってだから。とあたしは心の中で突っ込みを入れた。
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