太陽の竜と闇の青年
「離せ馬鹿!!!!!!」


私は支癸から逃れようと必死にもがいた。


だけど手に鎖をつけられているからなかなか逃れない。


「華のためだ。仕方ないだろう」


そのときの支癸の顔は少しだけ歪んで見えた。


「妹のためって……だからってこんなのおかしいだろ!」


支癸は私の言葉を無視して前へ進んでいく。


私は小さくため息をついた。


フィンドで倒せば一発なんだろうけど……。


この屋敷は何か仕掛けてあるのか、フィンドの力が出せない。


「お願いだ!壱を返してくれ!!」


頼むから…………。


私には、もう…………。


「時間がないんだ!!!!!!!!」


ピタリと支癸が足を止めた。


「時間がない?」


私はうなずく。


支癸は私の言葉にようやく耳を傾けてくれるようになったのか……。


「うん。私にはもう時間がないんだよ。壱と一緒にいられる時間も、私が生きていられる時間も……。何もかも時間がないんだ」


支癸は少しだけ眉をあげた。


「ルウ。お前、死ぬのか?」


私はその言葉に曖昧に笑う。


死ぬといえば確かに死ぬけど、死なないといえば死なないかもしれないから。


「そうかもしれない。だから壱と一緒に和国に来たんだ。まさかこうなるとは思ってもしていなかったけど」


支癸は少しの間黙り込んだ。


だけど何か決心をしたように顔をあげた。


「分かった。行ってこい。ルウ」


支癸は私の手枷をはずした。


「華は地下にいる。ここから真っ直ぐ行ったら降りる階段が見つかるはずだ。そこを全速力で降りろ」


そして、私の手を掴むと真っ直ぐに私をみた。


「ただし生きて帰ってこい。死ぬことは、許さない」


私は支癸を真っ直ぐ見返すと、深くうなずいた。


「あぁ。分かった。生きて帰ってくるよ」


支癸は私の返事を聞くと、パッと手を離した。


私は来た道をまっすぐに走った。


「……両想いと気づいていながらも、自分のほうを向いてくれるかもしれないだなんて、ただの妄想だろうな」


そう言った支癸の声なんて耳に入らなかった。
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