太陽の竜と闇の青年
「壱……?」


私はゆっくりと布団の上で眠っている壱の頬に手をあてた。


壱はそれでも目をさまさない。


そのとき、


「よくきたね」


一番聞きたくない声がした。


白虎が私の隣で唸り声をあげる。


私はゆっくりと布団からおりて白虎をなでた。


「大丈夫、大丈夫」


まっすぐ前を見据える。


「壱に何をしたの?」


華の周りには黒装束を着た男が三人いた。


華は扇子を広げると、それで自分を扇いだ。


赤色の派手な扇子だった。


私にはその赤がどうしても血の色に見えてしまった。


「誰に教えてもらったの?っていうことでもないよね。お兄ちゃんでしょう?」


白虎の背中をゆっくりと撫でる。


サラサラとした毛並みは撫でていて安心した。


「ねぇ……壱に何したの?」


ゆっくりと言葉を紡いだ。


あんまり強引なことはしたくないからね。


華は小さく笑った。


「ふふ。壱様、ルウを返せ返せってとーってもしつこかったの。華の壱様なのにね。嫉妬しちゃう。だから、ちょっとの間眠ってもらったの。睡眠薬を飲んでもらってね」


華は扇子をパンッと閉じた。


「その前に、あなたの命のほうが大切なんじゃないの?」


私は白虎を撫でるのをやめて自分の心臓に手をやった。


この命、もう短いかもしれないけどなぁ……。


大切っちゃ大切だな……。


さっきから気になったことを声に出してみた。


「有言」


ピクッと一番後ろにいた男の眉が小さくあがった。


「壱を眠らせるのに力をかしたの?」


華はフンッと鼻を鳴らした。


「有言って誰のことよ。第一、暗殺者が言葉を話すと思うの?」


私は首をコキコキとならした。

「思わない。だけど壱はきっと分かっていたと思うよ。有言が自分を眠らせるってこと壱はショックだったろうね。ずっと信頼してきた仕事仲間に裏切られたんだから。君たちは金のためならなんでもするの?」


私は嘲笑を浮かべた。


「それってさ、とっても悲しい生き方だよね」


短剣が飛んできた。


その短剣は白虎によってかみ砕かれた。
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