きすはぐあまこい
「…お疲れ様」
「ん、」
それだけ返事をすると沢木くんは作業が疲れたのか、机にうつ伏せになって夢の世界へ落ちてしまった。
沢木くんは多分、知らない。
いつも今日こそはもっとマシなことを言おう!って思っているのに、いざとなると緊張して『お疲れ様』しか言えないこと。
眠っている時、そのハニーブラウンの髪に触れたくてたまらない隣の席の存在を。
気まぐれなあなたがたまに気が向いたらしてくれる他愛のないお喋りを、どんなにわたしが楽しみにしているか―…。
そして、沢木くんの作品を作っている時の瞳。
それは会話の際には時折細くなって、笑顔を見せてくれる。
そんな沢木くんにわたしは、恋をしてしまった。