檸檬の変革
美空は火野と目が合った。

火野はクスリと笑うと美夏と一緒に花火セットを探し始め、ポケットからZippoを取り出し火の用意を始めた。


美空は夜空を見上げた。
時刻は9時を回っていた。

本当にランタン以外灯りがない。
僅かに海の向こうの陸の灯りが見えるだけ。
月も出ていない。聞こえるのは美夏と火野の笑い声と波の音。


美空は祖父が恋い焦がれていた天の川を自分も見たら、今のつまらない毎日が変わるかも知れないと思っていた。


祖父の見た天の川。同じモノを見たいと祖父が何時も身に付けていたネックレスに付いた十字架を握り締めた。


『美空!花火やろうよー!』
屈託のない美夏の声が呼んだ。


美空は立ち上がって砂を払いのけ花火を始めた。
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