c-wolf
と、その時、


「伽羅、閉じこめられちゃったの?可哀想に……」


クスクスと趣味の悪い、薄気味悪い笑い声が聞こえた。


その声は耳を防ぎたくなるほど苛つく。


バッと威濡と琥露、珠羅が振り返った時、誰も立っていなかった。


「こっちだよ」


そして、間近で聞こえた声。


威濡たちは今度はゆっくりと振り返った。


ニンマリと笑ったc-wolfの顔。


この前会った時とはまったく印象が変わっていた。


初め、誰かと思ったほどだ。


「伽羅を壊したこと怒ってるの?……でもね、あれは自分からなったようなものだよ?」


ゆっくりとc-wolfの腕があがり、人差し指が威濡を指さした。


「君に、嫌気がさしたそうだ」


琥露と珠羅が目を見張って威濡を凝視した。


威濡自身も目を見開いてc-wolfを凝視した。


「……どう、いうこと……だ」


c-wolfはクスクスと笑って、扉に触れた。


「伽羅はね、君たちが嫌いなんだってさ。威濡も琥露も、嫌いだって言っていたよ。だって、レインに気に入られてるから」


ニンマリと笑った顔が、とても恐ろしい。


と思った瞬間、c-wolfの顔が一気に豹変し、落胆したような、残念そうな顔になった。


そして、イジイジといじけたように扉を指でつつく。


「まぁ……、僕としては、こういう風な仲間割れを手伝いたくはないんだ……。だって、めんどくさいだろ?それなのにさ、伽羅が自分から壊れたから、僕が悪いことになっちゃってさ……。あぁ、これも計算外。ほんっと僕ったらまだまだ頭が悪いなぁ……、こういうことも予想しておかないとダメなのに……」


しかし、また変わった。


元気そうな青年の顔。


三人はc-wolfはまだ幼いと思った。


この笑った顔をみて。


「なにしろ、伽羅はレインに”人間扱い”されている君たちが羨ましかったんだから!!!憎むほど、殺したくなるほどね!」


へへ、と笑った顔は明るかったが、威濡と琥露にはその言葉が深く突き刺さった。


それに反論したのは珠羅だった。


「そんなことないです。兄さんはきちんと二人のことを好いていました」


すると、きょとん、とc-wolfが目をクリクリさせ、首を傾げた。


その唇がゆっくりと開かれた。
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