c-wolf
ゆっくりと目を開けた時、見えたのは真っ白い天井だった。


あぁ、気を失っていたのか。


側で誰かの吐息が聞こえる。


ゆっくりと首を動かして隣をみると、さっきまでの威濡のように珠羅がスヤスヤと寝ていた。


こうしてみると、ただの可愛い女だ。


威濡はボーッとそんなことを考えていた。


ゆっくりと起きあがった時、腹に鋭い痛みを感じて顔をしかめた。


その時、


「まだ寝ていたほうが身のためだぞ」


という低い声がして顔をあげると、背の高い男がいた。


その男が琥露だということを思い出すのに数秒かかった。


「あぁ……琥露か……」


琥露は静かな足音で威濡の隣に座った。


「……あの後、c-wolfは何をしたのか知らないが、勝手に伽羅の鍵を開け、中に入った。その後から物音がしなくなった。後で俺が官長に鍵を借りて部屋をのぞいたときには伽羅はおとなしく仕事をしていた。c-wolfのことを聞いても何も答えてはくれなかった」


わかりきっていた答えだ。


威濡は小さなため息を漏らし、立ち上がった。


「……珠羅を看ていてくれ」


琥露がうなずいた。


「……官長のところにいくのか?」


「あぁ」


「真実を確かめに?」


「いや……、あのことは忘れる。……忘れないと、俺は伽羅と会うこともできない。会ったら、伽羅に押しつぶされそうで怖いから」


威濡は羽織を肩にかけ、医療室から出ていった。
< 31 / 85 >

この作品をシェア

pagetop