“愛してる”の、その先に。
「え?休み?」
私は驚いて、パソコンの画面から顔を上げた。
「風邪ひいて、発熱だってよ。
ここじゃ1番若いのに、1番か弱そうだもんな村井は」
芝さんが連絡を受けたらしく、ホワイトボードの村井の欄に“欠勤”と書きなぐった。
「あいつ、昨日台風の中帰ってびしょ濡れにでもなったんじゃないか?」
「まぁ確かに、傘さしても意味ないくらいでしたもんねー」
社員たちが話しているのを黙って聞きながら、
昨日の村井の、どこか切なそうに私を見る表情を思い出した。
仕事が終わり、珍しく残業も長引かなかった私は、村井の家に向かった。
社員名簿で調べた住所は、会社の最寄りから地下鉄で20分のところで、
駅から10分ほど歩いた小さなアパートだった。
途中ドラッグストアに寄って、薬やスポーツドリンクなど風邪を引いた時に必要そうな物を買う。
1人暮らしだから、もしかしたら食べるものもないかもしれない。
そう思って、スーパーにも寄って軽く食材を買った。
思いのほか大荷物な状態で、村井の部屋を訪ねた。
インターホンを一回押しても返事がない。
…寝てるのかもしれない。
前持って家に行くと、伝えておけば良かった。
そう思った時だった。
「…はい」
ドアが開き、力ない声で村井が顔を覗かせた。
「は、早川さん…」
「この風邪っぴき。大丈夫?」
村井は驚いたのか、目を見開いて私を見た。