“愛してる”の、その先に。
ちょうど良いことに1人用の土鍋があったので、私はそれで鍋焼きうどんを作った。
「食材、ちょっと余ったから冷蔵庫入れとくから。明日にでも使って」
「はい」
村井の待つテーブルに鍋を持っていく。
「はいどうぞ。
簡単なもので申し訳ないけど」
「いえ!ありがとうございます」
「熱いから気をつけてね」
「はい、いただきます」
村井は嬉しそうに笑いながら、胸の前で手を合わせた。
「うん!美味いです」
うどんをすすりながら、村井は頷いた。
「そう?良かった」
そんな様子を横で眺める。
考えてみたら、スーツ以外の村井を見るのは初めてかもしれない。
Tシャツに短パンのラフな格好で…
だから余計に、普段より若くみえた。
「ご馳走さまでした。
すみませんホント、こんなことまでしてもらっちゃって…
早川さんには頭上がりません。
今度お礼させてください」
「じゃあ、次は村井のおごりで飲みに行こう」
私は綺麗に食べ終わった鍋を片づけながら言った。
「村井なら、ベロベロに酔っ払ってもちゃんと介抱してくれるから安心だし」
「なんですかそれ。僕、迂闊に酔っ払えないじゃないですか」
「それもそうね。
じゃあ次は、村井が思う存分飲んで良いわよ。私が介抱してあげるから」
「そう言って早川さん、俺のこと路上に置いてきそう」
「だって男のあんたを運べるワケないでしょ」
私と村井は顔を見合わせて笑った。