“愛してる”の、その先に。
「…ごめんね、こんな話しちゃって。
驚いたでしょ?
村井には、ちょっと刺激強かったかな。
軽蔑したって当然よ。私はそんな人間なん…」
そう言ってシャツのボタンを止めようとしたその時……
村井の腕が、ぐいと私の身体を抱き寄せた。
「む、村井……?」
「…そんな風に、言わないでください」
「え…?」
村井の声が、切なく響く。
「殺されて当然とか、殺されれば良かったとか…
そんな風に言わないでください」
「………」
村井の腕に力がこもる。
抱き寄せられて、私は村井の胸に顔をうずめた。
そうしていたら、何故が涙が出そうになった。
だから私は、その胸から身体を離した。
「ありがと、村井…
でもね、私は慰めてもらう資格なんてないの。
誰かに優しくしてもらう資格なんてない」
村井の純粋な優しさに、甘えたくなんてなかった。
そんなことしたら、村井はきっと押し潰されてしまうだろう。
「だからもう……」
「俺には」
村井が私の言葉を遮った。
「…俺には、
早川さんが“寂しい”、“慰めてほしい”って言ってるようにしか聞こえません」
「!?」
思わず顔を上げて村井を見た。
村井はじっと、私を見つめる。
「どうしてそうやって、目を背けようとするんですか?
そんなに怖いんですか、傷付くことが。
つらい時はつらいって言えば良いんです。
泣きたいのなら、泣いたって良いんです。
誰かに寄りかかったって、誰も早川さんのこと突き飛ばしたりしないですよ」