私の好きな人は駐在さん

もうすっかり寒くなり、もう秋も終盤だな感じさせる風が吹き抜ける。
それでも空は、珍しいことに、いつにもない曇りない青空だった。
すこし控えめに、太陽が光を放っている。

今日は、会社は休み。
久しぶりに、ゆっくり買い物をしようと、朝から出かけた。
自転車にでも乗って、家の近くで済ませようかと思ったけど、こんないい天気だし、散歩がてら、職場の近くの方まで足をのばそうかと、ゆっくり歩いていくことにした。
駅まで歩いてゆき、ホームで電車を待つ。
いつもと同じ道だけれど、休日というだけで、まったく心持が違うからか、全然違うように感じた。
ガタンゴトンと電車に揺られ、通り過ぎていく鮮やかな景色に目をやった。

いつものようにホームに降り立ち、まずは文房具やさんに寄る。
実は、文房具の会社に勤めてもいいな、と思っていたくらい文房具が学生時代から好きで、こうしてただただ文房具を眺めているだけでも楽しかった。
それに最近はかなり便利なものが次々と出ていて、本当に驚かされる。
私は、シャーペンの芯がなくなりかけていたことを思い出して、HBの芯を手にレジへ向かった。

次は、雑貨屋さん。一品を盛るような小さな器と、ティーポットがほしいなと、前から思っていて、会社の昼休みの時間にランチで外に出たついでにとてもいいティーポットをここの雑貨やさんで見つけていたのだ。それを買おうと、雑貨屋さんに足を向ける。
赤い屋根の家の角を右に曲がり、すこし道にそって歩いたところにその雑貨屋さんはある。こじんまりとした、白い壁のお店である。割と都会じみたこの近辺とは一線を画したような、カントリーチックな風合いがかなりおしゃれである。

足を踏み入れ、一通り店の中を見て回った。この間寄ったときは時間がなくてゆっくり見る暇がなかったけれど、とても可愛くてセンスのいいものばかりが並んでいる。いい香りのするアロマキャンドル、かわいらしい熊のぬいぐるみ、明るい色調のランチョンマット。どれもほしくなってしまう。

その中で、私はお目当てのオレンジ色のティーポットと、赤く縁どられた陶器の小さな四角い器を買うことにした。そして、レジ前においてあった、何とも素朴でかわいらしい干支の動物のキーホルダーを買うことにした。私は羊年なので、羊のキーホルダーにした。

お目当てのものも、手に入れられて、おまけにかわいらしいキーホルダーまで買えて、すっかり上機嫌の私は、あとは今日の晩御飯の用意を買うだけだから、家の近くのスーパーで買うことにしよう、と思い、駅まで戻ろうとした。
しかし、私の視界にちらっと入った建物――交番。
あの人は、今日も働いているのだろうか?
気になる。心なしか、鼓動が早まる。
戸惑いながらも、私の足は、駅とは反対の交番の方へ動いていた。





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