ビロードの口づけ
 入り口を背に黒い影が仁王立ちしている。
 ジンが気付いて探しに来たのだ。


「こんなところで何をしている」


 不愉快そうに言いながら、ジンが大股でこちらにやって来る。
 思わず後ずさりしたのを見てコウが歩み寄ってきた。


「クルミ様? 何か……」


 ジンがピタリと歩を止める。
 そして側まで来たコウと一瞬見つめ合った。

 次の瞬間、クルミを捕まえようとしていたジンの手は、コウの胸ぐらを捕まえて壁に押さえつけていた。


「ポンタ、おまえが連れ出したのか」


 低い声で静かに問いかけながらも、ジンは腕に力を加えてコウをぐいぐいと押さえつける。
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