君に夢中
「お母さん…お母さん…」
なにも言えずただ「お母さん」
と言いながら泣いていた。
お母さんは
「とりあえず家の中に入ろうっか」
と言っていたけれど、わたしは
怖くて入れなかった。
お母さんはわたしの手を引っ張って玄関のドアを開けた。
お母さんはあの部屋に向かって歩いて行く。
わたしは玄関でずっと泣いていた。
お母さんがあの部屋の扉を開ける音が聞こえてきた。
「ガチャッ。」
開けたと同時に買い物袋の落とす音と
お母さんの悲鳴が聞こえてきた。