あなたの隣が就職先
「私が先生のために作りたいの。ダメ?」
真っ赤な顔をしてそんなこと言われてしまったら……もう、僕は何も言えなくなってしまう。
スマホを弄りながら、チラチラとキッチンのほうを見てしまう。
もう今日で見納めになるセーラー服姿。短いスカートから伸びる真っ白なきれいな脚。
鼻歌交じりで味見をする彼女。その歌声も、きれいな長い脚も、長くまっすぐな黒い髪も、すべて僕のモノ。
彼女全部が僕のモノ。そう意識しただけで身体の奥が疼く。
彼女の苗字は今日変わった。僕と同じ姓になった。もう―――彼女は僕だけの人だ。
スマホをそのままソファーに置き、僕はキッチンいる彼女の背後に立つ。
「ん? 先生? もうちょっと待っていてね。もうすぐできるからね」
軽やかにお玉を回している彼女を、背後から抱きしめる。
「せ、先生?」
驚いた様子の彼女が愛おしい。僕はギュッと抱きしめ、前かがみになって彼女の項に唇を寄せた。
「っ! だ、ダメだよ。今、ごはん作っているのに」
「好きだよ、エミ」
「え……?」
初めて彼女を名前で呼んだ。もうこれからは、誰かに関係がバレるかもしれないと怯えることもない。
公私ともに晴れて僕のお嫁さんになった彼女の名前。その響きはとても甘かやかで、特別なもの。
涙を流す彼女の耳元で僕は精いっぱいの愛を囁いた。
「ご飯の前に、エミを食べさせて……」
FIN