記憶 ―砂漠の花―
「アラン。先生に送ってもらって、帰ってくる時はどうする気?まさかそのまま逃げないでよ?」
「いやねっ!可愛いアイリを残して逃げないって!酷いなぁ。」
「でも…」
何か反論しようとする私を止め、アランが続けて話す。
「帰りはシオンにだって王宮お抱えのウィッチはいるし、そのじぃさんにでも送ってもらうさ!」
「なら、いいけど…」
先生は、よいしょと立ち上がると、
「この地下道では防犯上、瞬間移動出来なく作ってある。出来るのはこの家の私の部屋だけだ。」
と、自分の部屋を指差した。
「アイリさんも覚えておいて?」
「はい…」
「じゃあ、いい機会だから私もシオン国王と少し話してくる。先に休んでなさい…。頼むよ、キース。」
「あぁ…。」
そのまま背を向けた先生に、タビが私の膝の上で、頬を膨らませた。
「ちょっとぉ~、ご主人様!アタシを元に戻してかりゃ行ってくだしゃる?」
「あぁ、すまん。アイリさん、タビを頼むね?」
先生は、タビを黒い子猫へと戻し、頭を優しく撫でると、アランとともに自分の部屋へと入っていった。
『いってりゃっしゃい。』
ニャァ…と、タビが高い声で鳴いた。