記憶 ―砂漠の花―
回復した母上は、
シオンから駆け付けた叔父様が見守る中、
『永久封印』した。
たくさんの悲しみを乗り越えて、
晴れて、結婚に至った二人。
その後、生まれたアズ。
そして、妹のアイリ。
その髪は金色、
その瞳は、緑色。
永久にウィッチの力を封印した母上からは、
『力を持たない子供』
が、生まれた。
……はずだったのだ。
父上が王位を継承し、ウィッチ狩りを廃止してからも、人々の意識は変わるわけもなく、
『カルラ妃が元ウィッチ』
という事は、
極秘に扱われた。
ラルファ国民は、自国の事で自分達の事で精一杯。
隣国シオンまで足を伸ばす事もない。
自然と明るみに出なかった。
叔父様も、その息子アランも、
当然ウィッチだったが、ラルファへ訪れる際は『封印』して来ていた。
何も知らずに育っていく、アズと妹アイリ。
家族には…、
ひとときの…
穏やかな幸せの時間が流れていた。
それは、短い時間…
サザエルの侵略が、
徐々に戦火を増す。
母上は、幼いアイリを連れ、
戦火が増すラルファ城下町から避難していた。
どこから情報は漏れたのだろうか…。