記憶 ―砂漠の花―
兵士は、アイリの首根っこを捕まえて宙吊りにした。
そして…、
鋭く光る剣で、
アイリの胸を、刺した――
「――やめてぇぇぇ―……!!」
母上の目には、
力なく砂に倒れる、幼い愛しい娘の姿。
「嫌…嫌ぁぁぁ…!」
その砂は、
赤く、赤く…染まる。
「……ふふふ…。致命傷だ、放っておけば事切れる。二つ目の心臓が動いたところで、この砂漠では飢え死ぬ。その前に獣に喰われるだろう。…お前は連れていく!行くぞ…!」
母上は、
何度も、何度も…
血を流す娘を、
涙で霞む目で振り返りながら連行された…
マルクは、
この時、知らなかったんだ。
母上が魔力を失っている事を。
……あれは…
――あれは、私……?
私…?
私の名は、アイリ。
拾われた子…
…なはずだったのに。
嘘、うそ…
これは、何―――?
母上の記憶、
私の記憶…。
母上の紅い力、
…封印された力、
私の…紅い力。
アズが生き返った、
…ウィッチ…
紅い力…。
砂漠で刺された妹アイリ、
事切れる…、
…もう一つの心臓。