記憶 ―砂漠の花―


今、『いいえ』と言ってしまえば…?

でも貴方は知っている。
私の生い立ちを…
私がうなされる悪夢の内容を…。


それでも…、

母上と父上と、
その他大勢に大きな嘘をついて、


私と二人で…、


この許されない罪と罰を受けてくれますか?

胸の奥に秘めた誓いをたててくれますか?

歪んだ愛を、
貫いてくれますか…?


『いいえ』と言ってしまえ…

私の心が叫んでいた。


――また…、

『嘘』で、

哀しみを増やすのか――?



「…私は…、私は…」


見つめる先のアズは、未だ目覚める気配はない。

母上が私の言葉を待っていた。


「…あの後、気が付くと独りでした。傷は自然と消え、母を探して砂漠をさ迷い…、アズに…保護されました…」

「アイリ…!!」


母上が私を抱き締める。
強く…
それは、強く…!


「ごめんなさい…、これまで、どんな辛い思いをさせたか…!拾われた子なんて…、もう二度と言わないで?」

「母上…!」


大好きな父上…
優しい母上…

私は、
自分の心を殺します…


大切な、大切なアズ…

どんなに心は殺せても、
貴方への秘めた強い想いは、

きっと、
このまま抱いて―――


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