記憶 ―砂漠の花―
アズが本当に言いにくそうに、こっちを見た。
「瞬間移動、失敗した…?」
「んなっ…!?」
思わず言葉をなくした私を見て、アズは『やっぱり…』と口だけ動かせた。
アズは、私の魔術に感心もしていたが、どうも彼の中では私が『失敗する』イメージが強いらしい。
しかめ面を見られたせいだろうか…。
「違うよ!!ちゃんとやったよ!キースのビジョンが間違ってるんじゃないの~!?」
「え~~、そぉ?」
アズはわざとらしく再び屈み、荷物を整理し始めた。
「ちょっとぉ~!!信じてないでしょ!?キースに聞いてよ、キースに!ところで、キース達はまだ帰ってこないの!?」
顔を赤めて怒る私を見上げて、いたずらっ子みたいに嬉しそうに笑うアズ。
「すぐムキになる。可愛いねぇ~アイリ。」
私に笑顔を向けたまま、さらりと言った。
まるでアランの様な口調だ。
「えぇ…!?ばっ、馬鹿にしてる!?」
アズから聞き慣れない言葉に、耳を疑いながらも、照れ隠しにそう言い放った私の言葉はうわずった。
「本当にそう思ってるよ…。あえて今まで言わなかっただけ。」
アズは、今度は普段通りの落ち着いた口調で私を見つめる。