Raindrop
始業式の朝は、重い雲の垂れ込める空だった。
それを見上げる僕の心も同じく、どんよりと重い。
当然のことながら、土曜日のレッスン後の料理教室は開かれなかった。
『緊張の元を早くどうにかしたい』と思っていた僕の気持ちは、未だ払拭されずに胸の奥でぶすぶすと燻り続けている。
どうにかするどころか、悪化させてしまったのだが。
『好きになっちゃ、駄目』
掠れた声が、耳の奥で何度も再生される。
冬休みの間の報告をし合っているクラスメイトたちの声で溢れかえる教室内で、自分の席に座っていた僕は人知れず溜息を零す。
と、がつん、と頭を硬いもので殴られた。
「おーっす、和音ぇ」
……響也だ。
鞄の角で僕の頭を殴りつけた彼は、人懐こい笑みを浮かべながら僕の前の席に座った。……そこは響也の席ではないのだけれど。
「おはよう。……もう少し加減をしてくれないかな。痛いよ」
「微笑みながら言うことか」
ケケ、と響也が笑った。