Sweet☆Lover



「やっぱり王子は最高!」

授業中も休み時間も、飽きもせず郁斗の話題ばかりが飛び交う。

「未紅、大丈夫?」

体育で疲れきって机に突っ伏していた私に声をかけたのは、小学校から親友の皆瀬 菜摘(ミナセ ナツミ)。

私と郁斗の関係を知っている、唯一の存在。


「暑すぎて干からびそう」

女子に囲まれて、楽しげに話す郁斗を見る。何年経っても馴れない。付き合い始めて、もうすぐ2年。それでも未だに、女子と戯れる光景には耐性がつかない。


「…郁斗くんに言わないの?」

「言えないよ。皆の王子様だからね」

皮肉を含めた言葉を、菜摘に返す。それでも菜摘は何も言わず、ただ傍にいてくれる。いらいらしてる私にも、優しくしてくれる。いつだって菜摘は、私に安心をくれる。



「…ごめん、菜摘」

「何謝ってんの。いらいらするの、わかるよ。気なんて遣わなくていいから」

「菜摘」

「ん?」

「大好き」

「私も大好き」


少しだけ癒された気がした。
相変わらず騒いでる郁斗の取り巻きは、べたべたと触り続けているけれど、目を背け、菜摘との会話に集中した。















郁斗は、学校で私に話かけることは少ない。





 
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