Sweet☆Lover




翌朝、いつもより重い体を起こして、洗面所へ向かう。

「はぁ…」

自然と溜め息が漏れる。
一緒に行くのが嫌なんじゃない。それはずっと望んでたことだけど、付き合ってることがバレたらと思うと、気が重い。



冷たい水で顔を洗い、寝起きでぼーっとする頭を覚ます。

それから制服に着替え、朝食を取り、軽くメイクをして――――郁斗を待つ。



「あら、今日はまだ行かないの?」

「郁斗が迎えに来るみたい…」

「郁斗くんが?珍しいのね。そうだ、近いうちに皆でご飯食べに行く予定あるから」

「はーい。」

お母さんとの会話がキリのいいとこで終わると、聞き慣れたインターホンではなく、玄関が開く音がした。

『未紅ー、行くぞー。あ、おばさんおはようございます!』

「インターホン鳴らせ」

「おはよう、郁斗くん。未紅をよろしくね♪」

『はい!じゃあ行ってきます』

私を無視して、二人が挨拶を済ませた後、郁斗に促されて外に出る。






ばかみたいに緊張してる。
ただ登校するだけだというのに、すごい勢いで心拍数が上がる。

『未紅、手ぇ繋ぐ?』

「繋げるわけないでしょ!」

『あ、でもほんとは繋ぎたいんだ?』

図星をつかれて、何も言い返せない私を、けらけらと笑う。


(むかつく…っ)




ほどなくして、学校が近づいてくると、生徒も増えてくる。

口々に聞こえてくる、予想通りの言葉。


《王子と一緒に登校してんの、誰?》
《郁斗様の彼女?まさかね》
《なにあれ、むかつく》



嫌な汗が吹き出る。
女子は嫉妬で、悪魔へと姿を変える。
それが女の怖いところだ。


「未紅ー!」

「菜摘…」

「郁斗くんと一緒なんて初めてじゃない?どうしたの?」

「いや、それが…」

『彼女と登校するのは普通だと思うけど。』

周りに聞こえないように小声で会話する。

(今まで登校しようともしなかったくせに…)





 
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