チョコレートトラップ
普通の先生なら

生徒がこんな発言をしたら

怒鳴ってもいいはず。


でも後藤先生は少し

感覚がずれているようで、

「そうかも」などと言いながら

ふんわりと笑顔でこたえた。


「でもね、授業も

 ちゃんと進めないとね。

 後で大変な思いをするのは

 貴方たちだから、

 それだけはさせたくないの」


穏やかな後藤先生の言葉に、

ようやくバラバラと

席に着き始める。


その様子をじっと見つめて

全員が座ったのを確認してから、

後藤先生は小さく頷き

私へ視線を向けると

思いがけない言葉を投げかけた。


「磯貝さん。

 訊きたいことがあるんだけど、

 いいかしら?」





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