チョコレートトラップ
―――このままじゃ、

完全にウソタのペースに

はまっちゃう。


「ほ……、ほっといてよ」


引っかかっていたままだった

言葉をようやく口にしたけれど、

虚しく私たちの間を

彷徨っている。


どうやらそれが耳に

届いていなかったようで、

ウソタがほんの少し首を傾げる。


イタズラな笑顔を

私に投げかけながら。


「わ、私はウソタの彼女に

 なったつもりはないって、

 前にも言ったじゃない!

 もうデタラメばかり言わないで!」


顔がぽっぽと火照っているのを

感じつつも、

今の私に出来る

精一杯の強がりを見せた。


そんな私を知ってか知らずか、

ウソタはニヤリとした顔を

崩すことはなかった。






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