チョコレートトラップ
「……!」


高橋くんの視線が、

私と交わった。


というか、

私の視線を絡めとるような

熱い視線を私に向けてきた。


無表情のまま、

ねっとりとした目をさせている。


……私の気のせい、

じゃなさそうだよね。


他の人はまったく

気付いていないみたいで、

割れんばかりの拍手を

高橋くんへ向け続けている。


どうしたらいいか分からない私は、

唇を少し噛み締める。


すると高橋くんが、

今度はほんの少しだけ

左側の唇をくっと上げた。


その僅かな動きが怖くなって、

私は素早く視線を落とした。





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