チョコレートトラップ
「ホワイトデーまでの1ヶ月間を

 “お試し期間”

 とするんだって。

 私は今まで通り、

 高橋くんを想い続けてもいいし、

 それに告白だってしてもいい。

 でもウソタはその1ヶ月で

 私を振り向かせてみせるって」


ウソタからの一方的な『賭け』。


そんな『賭け』、

普通だったら断ったっていい

と思う。


でも、ウソタに

高橋くんへのラブレターが

渡っている弱みを

握られている状態では

断ることなんて到底出来なかった。


こんな嘘みたいな、

というか未だに嘘だと思っている

『賭け』を、

凛はどう思ったんだろう。


ベンチに置いていた

お弁当を手に取ると、

今度はプチトマトを口に運んだ。


そんな私に凛が

私の肩をぽんぽんと

優しく叩いたかと思うと、

目を細めるように私を見つめて、

「ファイト」

囁くような声でポツリと呟いた。






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