チョコレートトラップ
凛ってば、完全に

私の置かれてる状況を楽しんでる。


私に囁いたと思ったら、

クスクス笑いが

止まらないでいるから。


「もう、凛。

 他人事だと思って

 楽しんでるんでしょ?」


頬をぷっくりと膨らませて言う私に、

凛はさらに笑い声を上げながら

激しく首を上下させる。


「他人事だもん。

 やー、やっぱり

 芹菜って天然だよね。

 なんでウソタと

 高橋くんの下駄箱を間違えるかな。

 それにウソタの名字が

 『高橋』だったのも、

 芹菜、知らなかったんでしょ?」


「そ、それは……」


凛の言葉に膨らませていた頬を

しぼめて視線を落とす。


ここまで凛に言われると、

自分の性格が嫌になるし、

恥ずかしい。


あんなに大事なことを、

あの時の自分はなんで

急いで済ませてしまったのだろう。


本命チョコだからこそ、

落ち着いて確実に

やらなければいけなかったのに。







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