クランベールに行ってきます


 お茶を飲み終わり、二人が仕事に戻ると、結衣はさっさと後片付けを済ませた。給湯コーナーから出て、すぐロイドに告げる。

「私、部屋に戻る」

 ロイドは振り返り、

「そうしろ。生理痛なら、しばらく寝とけ」

 そう言いながら、こちらにやって来た。
 向こうでローザンが苦笑している。ウソだとわかっているくせに、イヤミな男だ。結衣はムッとして、眉を寄せるとロイドを睨んだ。
 ロイドはそれを無視してローザンに一声かけると、結衣と共に研究室を出た。
 一言も口をきかないまま王子の部屋にたどり着き、結衣が扉に手をかけるのを見届けて、ロイドは立ち去ろうとした。結衣は慌てて、それを引き止める。

「待って。一緒に来て」

 ロイドは怪訝な表情をしながらも、結衣の後について部屋に入った。
 部屋の中では三人の女の子が掃除の真っ最中で、ラクロット氏がそれを監督していた。
 部屋に入ってきた結衣を見て、ラクロット氏は驚いたような顔をした。いつも日中はロイドの研究室に入り浸っていて、夜にならないと部屋に戻らないからだ。

「殿下。いかがなさいましたか?」

 少し目を見開いて問いかけるラクロット氏に、結衣は王子になって命令する。

「ラクロット、悪いけど、彼女たちと一緒に外に出てくれないか?」

 ラクロット氏は結衣の後から入ってきたロイドに少し視線を送ると、

「かしこまりました」
と言って軽く頭を下げた。

 ラクロット氏が女の子を連れて部屋を出て行くと、結衣はまっすぐリビングに向かった。ロイドはリビングの入り口で立ち止まると、無表情のまま芝居がかった調子で結衣に問いかける。

「人払いまでなさって、私にどういった内密のご用件ですか? レフォール殿下」
「茶化さないで。こっちに来て」

 結衣が強い口調でそう言うと、ロイドは大股で結衣の目の前まで歩み寄った。威圧するように背筋を伸ばして、上から見下ろす。

「何の用だ」


< 134 / 199 >

この作品をシェア

pagetop