雨あがりの空に
家に帰ると、拓海が玄関の外で待っていた。


「…拓海?どうした?外なんかに出て…」

「…パパ……ママがね…僕と約束してって言ったんだ…ママが居なくなったら…パパのこと…支えてあげてって…」

「……え?」

「…ねぇ、パパ…ママは…ママは…死んじゃうの?」

「…………」

「ママ、この前に…一緒にお散歩したときに言ってたんだ……ママはもうすぐ居なくなっちゃうって……」


「……拓海…」

俺は、拓海を抱きかかえて、家の中に入った。


そっとベッドの上に下ろすと、拓海の目線に合わせてしゃがんだ。


「…拓海、ママは死んだりなんかしないよ」

「…絶対に?ママは、僕のこと置いていかないよね?ママは、ずっと側にいるって約束してくれた…。だけど…居なくなっちゃうって言ってた。どっちが本当なの?」


「…居なくなったりしない。もうすぐママは帰ってくるよ。…絶対にな。パパはそう信じてる。……だからもう、そろそろ寝ろ。なっ?」

「…うん」



拓海は、そう言うと…ゆっくりと深い眠りについた。


拓海の目には、涙の痕があった。

きっと…たくさん泣いたんだな。悲しくて、辛くて…。


俺は、そっと涙の痕を撫でた。



どうして…翠なんですか?


この世界には、たくさんの人が居るというのに…。


どうして…神様…。

あなたは、翠を選んだですか?


翠は、あなたに何かしましたか?





翠は…翠は…
< 79 / 112 >

この作品をシェア

pagetop