雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
突然の地響きが、暁天宮を襲った。
同時に天井が崩れ、壁画に大きくヒビが入る。
舞い上がった土埃に視界が遮られる中、月夜は雪の腕にしっかりと守られていた。
「自らここに赴いたということは、とうとう観念したか」
姿を現した帝釈天が、瓦礫の上でほくそ笑んだ。
その背後にできた大穴から、獣の咆哮が響きわたる。
イシャナがこちらへ近づいてきていた。
「帝釈天、貴女はご存じか。ガルナの神はもう……」
「そのようなことは、どうでもよい。あの子を取り戻せれば、あとはどうとでもできる……たとえ天が許さずとも、誰にもわたくしの邪魔はさせぬ。あの子自身が……許さずともじゃ――」
帝釈天の呟きに、月夜は己が抱いていたものの間違いに気づいた。
――もしかして帝釈天は、須佐乃袁様を救いたいだけなのか。無慈悲なんかではなく、乱暴なくらい不器用で、大切に思っているからこその……?
こんな、双方が守りたいもののために傷つけ合わなくてはならない戦いを、誰が望んでいるというのだ?
自分を守るために誰かが犠牲になることを、喜ぶ者が本当にいるのだろうか?
月夜は自問自答を繰り返す。
誰かを傷つけてまで手に入れたものに、いったいどんな意味がある?
ただ、自分さえよければいいと云う考えが招くのは……破滅だけだ。
「お願いです。須佐乃袁様を救いたいのは私も同じ。でも私は十六夜も、ガルナも、イシャナも救いたい! それが叶うなら、なんでもします……私を傷つけるのは構わない。だから――」
一瞬、視界が完全に遮られ、月夜は暗闇に目を瞠る。
ただ、耳を塞ぎたくなるような骨の砕ける音がきこえ、背筋が凍りついた。
同時に天井が崩れ、壁画に大きくヒビが入る。
舞い上がった土埃に視界が遮られる中、月夜は雪の腕にしっかりと守られていた。
「自らここに赴いたということは、とうとう観念したか」
姿を現した帝釈天が、瓦礫の上でほくそ笑んだ。
その背後にできた大穴から、獣の咆哮が響きわたる。
イシャナがこちらへ近づいてきていた。
「帝釈天、貴女はご存じか。ガルナの神はもう……」
「そのようなことは、どうでもよい。あの子を取り戻せれば、あとはどうとでもできる……たとえ天が許さずとも、誰にもわたくしの邪魔はさせぬ。あの子自身が……許さずともじゃ――」
帝釈天の呟きに、月夜は己が抱いていたものの間違いに気づいた。
――もしかして帝釈天は、須佐乃袁様を救いたいだけなのか。無慈悲なんかではなく、乱暴なくらい不器用で、大切に思っているからこその……?
こんな、双方が守りたいもののために傷つけ合わなくてはならない戦いを、誰が望んでいるというのだ?
自分を守るために誰かが犠牲になることを、喜ぶ者が本当にいるのだろうか?
月夜は自問自答を繰り返す。
誰かを傷つけてまで手に入れたものに、いったいどんな意味がある?
ただ、自分さえよければいいと云う考えが招くのは……破滅だけだ。
「お願いです。須佐乃袁様を救いたいのは私も同じ。でも私は十六夜も、ガルナも、イシャナも救いたい! それが叶うなら、なんでもします……私を傷つけるのは構わない。だから――」
一瞬、視界が完全に遮られ、月夜は暗闇に目を瞠る。
ただ、耳を塞ぎたくなるような骨の砕ける音がきこえ、背筋が凍りついた。