雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
二人は弾き飛ばされ、月夜は雪の上に倒れた。
イシャナは阿修羅の牙からすんでのところで逃れながら、体勢をととのえるとふたたび二人に飛びかかる。
「ぎゃぁうっ!」
しかし横から阿修羅になぎ倒されて、引き離される。
威嚇しあう獣を前に、月夜は即座に身を起こすと、血塗れの雪を見下ろした。
「大丈夫か? すぐに手当てを……」
傷口を押さえようとした手を掴まれ、月夜は狼狽える。
見るからに重症であるのにもかかわらず、彼は顔色ひとつ変えずに云った。
「いいか。お前はここを出ろ。帝釈天は俺が抑えておく、そのすきに――」
「馬鹿なことを云うな! いくら力が使えずとも、相手は神だぞっ。それにその怪我では素手でも戦うのは無理だ」
「訊け! アレをどこへやった? アレがなければ、封印は解けない。だが、あいつがアレを手に入れれば、どんな手を使ってもお前に云うことをきかせるぞ。たとえば帝の命とひきかえにしてもだ」
雪の云うことに、月夜は動揺した。
彼の言葉はどうにも腑に落ちない。
月夜を契約で縛っておきながら、命を危険にさらしてでも守ろうとするのはなぜか?
いや、その逆だ。
神の命で月夜を守る立場にありながら、なぜ彼は月夜を自分のものにしたがるのか。
それとも、なにか裏があるのだろうか?
「アレとはなんだ? ボクにどうしろと云うんだ!」
「俺から取り返したものだ。アレにはお前の半神を封じる呪がかけてある。封印はお前にしか解けない」
白童から託された鍵のことだとわかり、月夜はようやくあれが、なぜ神を封じていた鍵だと思い込んでいたのかを理解した。
「そうか……あれが、ボクのもう半分を目覚めさせる鍵だったから……」
イシャナは阿修羅の牙からすんでのところで逃れながら、体勢をととのえるとふたたび二人に飛びかかる。
「ぎゃぁうっ!」
しかし横から阿修羅になぎ倒されて、引き離される。
威嚇しあう獣を前に、月夜は即座に身を起こすと、血塗れの雪を見下ろした。
「大丈夫か? すぐに手当てを……」
傷口を押さえようとした手を掴まれ、月夜は狼狽える。
見るからに重症であるのにもかかわらず、彼は顔色ひとつ変えずに云った。
「いいか。お前はここを出ろ。帝釈天は俺が抑えておく、そのすきに――」
「馬鹿なことを云うな! いくら力が使えずとも、相手は神だぞっ。それにその怪我では素手でも戦うのは無理だ」
「訊け! アレをどこへやった? アレがなければ、封印は解けない。だが、あいつがアレを手に入れれば、どんな手を使ってもお前に云うことをきかせるぞ。たとえば帝の命とひきかえにしてもだ」
雪の云うことに、月夜は動揺した。
彼の言葉はどうにも腑に落ちない。
月夜を契約で縛っておきながら、命を危険にさらしてでも守ろうとするのはなぜか?
いや、その逆だ。
神の命で月夜を守る立場にありながら、なぜ彼は月夜を自分のものにしたがるのか。
それとも、なにか裏があるのだろうか?
「アレとはなんだ? ボクにどうしろと云うんだ!」
「俺から取り返したものだ。アレにはお前の半神を封じる呪がかけてある。封印はお前にしか解けない」
白童から託された鍵のことだとわかり、月夜はようやくあれが、なぜ神を封じていた鍵だと思い込んでいたのかを理解した。
「そうか……あれが、ボクのもう半分を目覚めさせる鍵だったから……」