ヴァンタン
取り出した携帯のカバーを開けライト代わりにする。
潜望鏡の正体を確かめるためだった。

甲板で眠っているチビに気遣いながら、私はそっとそれに近付いた。




煙突の横に穴があり、階段で降りられるようになっていた。


早速一人で降りてみた。
煙突の正体は、調理室だった。


――ここで料理したのか?


火を使う為だろう。
調理用ストーブの周りは防火対策の為にレンガ造りになっていた。


目を瞑る。

乗り組んだ船員の空腹を満たす為に奮闘するシェフの姿を思い浮かべてみる。


――材料は?
私は辺りを見回した。

幾ら満月だと言っても船底まで明るい筈もなく、ただゴロゴロした何かがある位しか解らなかった。
< 65 / 198 >

この作品をシェア

pagetop