光のもとでⅠ
 そんなふたりを見るのは初めてで、私は歯が噛み合わなくなるほどガタガタと震えだす。
「リィ、大丈夫だから」
 手を握ってくれたのは唯兄。
「側に行っても大丈夫なのか……?」
 不安そうに訊いてきたのは蒼兄だった。
 頷いたら涙が零れそうで、顔すら動かせない。
 でも、声が出せるような状態でもなかった。
 そして、視線も逸らせない。
 お母さん、一サイズ以上は痩せたんじゃないだろうか……。
 普段はあまり着ないワンピースを着ていた。
 けれども、そのワンピースもどこかサイズが合っていない感じで、洋服の中で身体が泳いでいる。
 コツ、と音がして、お母さんがこちらへ歩みを進めたことがわかる。
「治療、つらくない? ご飯、食べられてる?」
 第一声はそれだった。
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