光のもとでⅠ
 どうしてか、若槻さんに見せることにはなんの抵抗もなかった。
 一番抵抗があったのは栞さんに見せるときだった。
「派手にやらかしたね」
 それが第一声。
 口もとに手をあてて、「あちゃ~……」といった感じ。
「でもね、気づいたらこうなっていたの」
「でもやったのはリィ?」
「そうみたい……。爪に茶褐色のものが詰まっていたし……」
「無意識のうちに、ってやつか」
「はい。だから、今は寝るときには手をタオルで巻かれているし、夜は蒼兄と一緒の部屋で寝ているの」
 先ほどシートを買えたときに両手をタオルでぐるぐる巻きにされたので、それを見せる。
「それ、なんで? って、どこで訊こうか俺悩んじゃったよ」
 と、苦笑を浮かべる。
「こんな理由でした……」
「ところであんちゃんは?」
「レポートを作成しているところだと思います。呼べばすぐに来ると思うけど……」
 と、携帯を手に取ると止められた。
「いや、俺もすぐに仕事に戻らなくちゃいけないんだ。って言っても秋斗さんの家だけどね」
 指で上を指しながら笑う。
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